カーボンナノチューブ・グラフェンなどのナノ物質や半導体・金属のナノ構造が持つ優れた性質は、基礎応用両面から注目されています。これらの系は極めて微小な長さで特徴付けられるため、量子力学的効果が重要になります。また、電子はしばしば2次元や1次元に閉じ込められているので、低次元系特有の性質が現れます。私たちはこれらの系の性質を解明する理論研究を行っています。
物質中の一つの電子が光照射などにより高いエネルギーになった状態は励起状態と呼ばれます。これとは別に、物質中には一電子の励起状態を多数重ね合わせた集団励起状態と呼ばれる状態が現れることがあります。励起子とプラズモンは固体における代表的な集団励起状態で、系の光応答を特徴づけることがあります。私たちは、グラフェン・カーボンナノチューブなどにおいて、励起子とプラズモンが統一的に記述できることを例証しました。
物質に電場を印加すると電流や電子分布の偏りである分極が生じます。このとき電流や分極は観測する位置の電場だけではなく物質中の他の場所の電場の影響も受けます。これは非局所応答と呼ばれます。物質の電場に対する非局所応答は、局所応答の近似では記述できない現象を引き起こすことがあります。私たちは局所応答と非局所応答する物質が共存する系の光応答を精度よく計算する手法を開発しました。